大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和49年(特わ)180号 判決

本店所在地

東京都中央区銀座八丁目五番一九号

バーデイ商事有限会社

右代表者代表取締役

山本祥示

本籍

東京都台東区秋葉原一一番地

住居

同都目黒区柿ノ木坂二丁目一四番一四号

会社役員

沢辺道子

大正一二年五月一七日生

右バーデイ商事有限会社に対する法人税法違反、沢辺道子に対する法人税法違反、所得税法違反被告事件について検察官寺西輝泰出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人バーデイ商事有限会社を罰金二五〇万円に、被告人沢辺道子を懲役八月および罰金七〇〇万円に処する。

被告人沢辺道子においてその罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人沢辺道子に対し、この裁判確定の日から二年間その懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人バーデイ商事有限会社(以下被告会社という。)は、東京都中央区銀座八丁目五番一九号に本店を置きバーの経営を目的とする資本金六、二〇〇、〇〇〇円の有限会社であり、被告人沢辺道子は、被告会社の取締役として事実上同会社を経営し、その業務全般を統轄するかたわら、個人で同都中央区銀座八丁目三番一一号和恒ビル四階においてバー「クラブヴエルサイユ」を、同都港区西新橋一丁目一八番六号童宝ビル一階において「リベラ美容室」を、それぞれ経営しているものであるが、被告人沢辺道子は、

第一、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ

一、昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二七、六一一、一三五円あったのにかかわらず、昭和四六年二月二六日、東京都中央区新富二丁目六番一号所在の所轄京橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九、八一九、三四三円で、これに対する法人税額が三、三四五、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額九、八八四、五〇〇円と右申告税額との差額六、五三八、六〇〇円を免れ(別紙第一、第五)

二、昭和四六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一七、八〇三、四四〇円あったのにかかわらず、昭和四七年二月二六日、前記所轄京橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、二一八、二四七円で、これに対する法人税額が二、七五七、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額六、二八〇、一〇〇円と右申告税額との差額三、五二二、五〇〇円を免れ(別紙第二、第五)

第二、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ

一、昭和四五年分の実際課税所得金額が二〇、九二七、〇〇〇円あったのにかかわらず、昭和四六年三月一一日、同都目黒区中目黒五丁目二七番一六号所在の所轄目黒税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が七、〇九〇、〇〇〇円で、これに対する所得税額が三六一、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額六、二三五、七〇〇円と右申告税額との差額五、八七四、七〇〇円を免れ(別紙第三、第六)

二、昭和四六年分の実際課税所得金額が四五、八六八、〇〇〇円あったのにかかわらず、昭和四七年三月一〇日、前記所轄目黒税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が一、三九二、〇〇〇円で、これに対する所得税額は一七八、三〇〇円であるが、すでに源泉徴収された二六七、九六〇円を控除すると、その差額八九、六六〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額二二、六五八、六〇〇円と右申告税額との差額二二、七四八、二〇〇円を免れ(別紙第四、第六)

たものである。

(証拠の標目)(証拠書類については検察官の証拠請求番号、証拠物については当庁昭和四九年押第七二七号の符号を、それぞれかっこ内に示す。)

判示事実全部につき

一、被告人沢辺道子の

(一) 当公判廷における供述

(二) 検察官に対する各供述調書(己19、20)

一、被告人沢辺道子に対する収税官吏の昭和四七年七月七日付、同年八月一一日付、同年一一月二七日付、同年一二月二五日付、同四八年一月二四日付の各質問てん末書(乙5、15、18、6、7)

一、被告人沢辺道子作成にかかる昭和四七年一一月九日付および同月一四日付の各上申書(乙8、10)

判示冒頭の事実につき

一、登記簿謄本(甲一1)

判示第一の事実につき

一、被告人沢辺道子の作成にかかる昭和四七年一〇月一八日付(二通)、同年一一月九日付の各上申書(乙一1、2、3)

一、次の者の検察官に対する各供述調書

片岡正彦(甲一4)、稲吉京子(甲一7)

一、池沢勝に対する収税官吏の質問てん末書(二通)(甲一5、6)

一、次の者の作成にかかる各上申書

田村秀男(五通)(甲一8、9、10、12、13)、池沢勝(昭和四七年一〇月二日付)(甲一11)、加藤永泰(甲一14)、小林顕治(甲一15)

一、次の者の作成にかかる各証明書

高橋俊郎(甲一22)、北野忠男(甲一23)、小田義彦(二通)(甲一24、25)、永戸一朗(甲一26)、東京都中央都税事務所長(甲一29)

一、次の収税官吏作成にかかる各調査書

佐藤清栄(昭和四七年九月二〇日付)(甲一27)、木下正一(昭和四八年一月一九日付)(甲一28)

一、佐藤清栄作成の修正貸借対照表(甲一30)

一、次の証拠物

元帳四綴(2、3、8、14)、売掛帳二綴(4、5)、ホステス別売上メモ一袋(7)、売上等メモ帳一綴(11)、賞与明細表一袋(13)、年度別試算表一袋(15)、月別試算表一袋(16)、売掛帳三綴(17、18、19)、法人税確定申告書一袋(21)

判示第二の事実について

一、被告人沢辺道子の作成にかかる昭和四七年一一月一〇日付、同月一七日付、同四八年二月二四日付、同四九年一月三〇日付の各上申書(乙一9、11、12、14)

一、被告人沢辺道子に対する収税官吏の昭和四七年一一月一一日付質問てん末書(乙一17)

一、次の者の検察官に対する各供述調書

福田和江(甲一44)、加藤由美子(甲一47)、酒口米子(甲一48)

一、次の者に対する収税官吏の質問てん末書

山口なお子(甲一42)、福田和江(甲一43)、山本祥示(二通)(甲一45、46)

一、次の者の作成にかかる上申書

福田和江(三通)(甲一49、50、51)、加藤永泰(三通)(甲一52、53、61)、小林顕治(甲一54)、小野寺克雄(甲一55)、薬袋周三(甲一56)、池沢勝(昭和四七年一〇月二八日付)(甲一57)、平山義次(甲一59)、荻野恒子(甲一60)、二階堂博史(甲一62)、山本祥示(甲一63)、田村秀男(五通)(甲一64、65、66、67、68)

一、検察事務官作成の捜査報告書(甲一58)

一、次の者の作成にかかる各証明書

高橋俊郎(甲一69)、佐々木康修(甲一70)、小林猛(甲一74)

一、次の収税官吏作成にかかる各調査書

佐藤清栄(昭和四七年一一月四日付)(甲一71)、川村真(甲一72)、木下正一(昭和四八年一月一九日付)(甲一73)

一、次の証拠物

土地売買契約書等一袋(24)、建物賃貸借契約書等一袋(25)、メモ一袋(28)、領収書等一袋(29)、総勘定元帳二綴(30、64)、金銭出納帳二綴(31、46)、振替伝票一綴(32)、経費明細帳一綴(33)、試算表三綴(34、35、36)、売掛台帳五綴(37、38、39、40、41)、貸付金等明細帳二綴(42、43)、飲料税領収証等綴一綴(44)、税務署提出書類控綴一綴(45)、元帳二綴(47、57)、決算書申告書控綴一綴(48)仕入帳二綴(49、52)、売上帳一冊(50)、経費帳一綴(51)、売掛帳一冊(55)、収支帳一冊(56)、売上帳一綴(58)、売上経費集計表一袋(59)、年末賞与内訳表等一袋(60)、賞与明細表一袋(61)、所得税の確定申告書一袋(62)、青色申告関係書綴一綴(63)

(法令の適用)

被告会社の判示番一の一、二の各所為はいずれも法人税法第一五九条一項、一六四条一項に該当するが、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金二五〇万円に処し、

被告人沢辺道子の判示第一の一、二の各所為はいずれも法人税法一五九条一項に、第二の一、二の各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するが、各所定刑中いずれの罪についても、懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第二の二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法四八条二項による各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人沢辺道子を懲役八月および罰金七〇〇万円に処し、被告人沢辺道子において右の罰金を完納することができないときは同法一八条により金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、同被告人については、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右の刑の執行を猶予することとする。

(裁判官 日浦人司)

別紙第一

修正損益計算書

バーディ商事有限会社

自 昭和45年1月1日

至 昭和45年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別表第二

修正損益計算書

バーディ商事有限会社

自 昭和46年1月1日

至 昭和46年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙第三

修正損益計算書

沢辺道子

自 昭和45年1月1日

至 昭和45年12月31日

〈省略〉

修正損益計算書

〈省略〉

別紙第四(その1)

修正損益計算書

沢辺道子

自 昭和46年1月1日

至 昭和46年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙第四(その二)

沢辺道子

自 昭和46年1月1日

至 昭和46年12月31日

〈省略〉

別紙第五

ほ脱税額計算書

バーデイ商事有限会社

45.1.1~45.12.31

46.1.1~46.12.31 事業年度分

〈省略〉

別紙第六

ほ脱税額計算書

沢辺道子

〈省略〉

(注) 18の税額の算出

45年分 15,026,000円×55%-1,812,000円=6,452,300円(附則別表第一)

46年分 45,868,000円×65%-5,187,500円=24,626,700円

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例